14.ビデオショップ
桃源郷にもテレビはある。あるにはあるが、余りにも国土が広く、地域によっては国営放送すら映すことが出来ないのが現状だ。
政治経済等の情報は新聞で補うことが出来るが、やはり娯楽性の高い番組を見たいと思うのは、人の性だろう。
その解決策の一つに、ビデオテープがある。
少し規模の大きめの町に行けば、売っている物もレンタルしている物も、難なく手に入る。
テレビが映らない土地の事情は個人でどうすることも出来ないので、それらの需要は意外と高かった。
とあるレンタルビデオ店――
「うっわ、スゲェ一杯ある!」
「騒ぐんじゃねぇ猿!」
「おーおーはしゃいじゃって・・・これだから世間知らずのサルは」
「俺サルじゃねぇ!」
「はいはい、言い合いはそこまでにして、ほら悟浄、『世にもホラーな物語』ですよ♪」
「いやいやいや、勘弁してクダサイ;」
「なー八戒ー、この女のヒト、三蔵と似た格好しているぞ?」
「わー、懐かしいですね。夏○雅子ですよ」
「あ、知ってる知ってる。兄貴、このドラマ大好きだったからさ、毎週俺を連れて土建屋のオッチャンとこで見せてもらってたっけ。
俺、堺〇章の真似して岩から宙返りしようとして、もう少しで首の骨折るところだったぜ」
「悟浄はどちらかというと岸○シローっぽくありませんか?」
「何よ、それ」
「俺、このタイトルのって香○慎吾のしか知らない・・・」
「チッチッチ、浅いねぇ。これを知らなきゃ通じゃないのよん」
「悟浄がオッサンなだけじゃん」
「何だとコラ〜」
「他のお客さんもいらっしゃるんですから、取っ組み合いはやめて下さい2人共。
せっかくシリーズ全巻揃ってるんですから、今日は徹夜でこれを見倒しますか、三蔵?」
「・・・却下」
「「へ?」」
「それはまた、どうしてです?」
「・・・・・・続き物は見たくねぇ」
「「「は?」」」
「いつ襲撃があるか、いつ死ぬかも判らん旅の中で、長編シリーズものは見たくねぇってんだよ」
目がマジである。
いつ襲撃があるか云々は確かにそうなのだが、自分達はそれでも今まで数々のピンチを切り抜けてきたのだ、中断されて後悔する事を考えるより、中断させるような輩を瞬殺すればいいだけの話ではないだろうか。
「そういやお宅、番組が佳境に入ったところでCMになった時、マジギレしてテレビを撃ちかけたな・・・うちのテレビを」
「本を借りる時も、3冊以上続くシリーズ物は断固として読もうとしませんでしたよね」
「続き物という形態そのものが姑息なんだよ。途中で不慮不測の事態に陥ってみろ、続きが気になって死んでも死にきれんだろうが」
「いやそれどう考えても極端だろ;」
「とにかく、長編物は却下だ却下」
頑なに首を縦に振らない旅のリーダーに、訳が判らないもののこれ以上の説得は無理と判断した悟浄と八戒は、顔を見合わせて肩を竦めた。
「仕方ありませんね・・・三蔵がそう仰るのなら、やっぱりこれにしましょうか」
「だから『世にもホラーな物語』は止めてくれって!」
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あとがき
原作でAV持ち歩いているくらいだから、ビデオショップも一応あるんでしょう。ということで無理矢理桃源郷設定。
‘09年1月発売のWordで外伝を見て、金蝉がシリーズ物を1巻目しか読まずにあの事件に巻き込まれた部分を見て思い付きました。の割にはオチをつけるのに時間が掛かりましたが。
外伝がクライマックスへと向かっていたとゆーのにこんな小ネタを捻り出す香月の脳ミソに乾杯。
お題No.13の内容を少し引っ張っております。 |
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