今も握手は苦手





34.手を繋ぐ


 他人の体温は、嫌いだった。
 他人の肌の感触が、嫌いだった。

「悟能、外の道を歩く時は、隣の子と手を繋ぎましょう?」
「なぜそんな事をする必要があるんですか?余所見して列を離れるような、集中力に欠ける子供じゃないんですから」
「悟能・・・」

 手を繋いだり、握手したり、肩を組んだり、背中を叩いたり、
 その意味合いを理解出来なかったし、理解したくもなかった。






 他人の体温は、嫌いだった。
 他人の肌の感触が、嫌いだった。

「ね、悟能。手・・・繋ご?」
「悟能ったら、そんなにくっ付いたら、私歩きにくいじゃない」
「悟能の手、あったかいのね。私冷え性だから、家に着くまでこうしててね?」

 手を繋ぐことで何かが伝わると、君は教えてくれたんだね。







あとがき

現在も接触嫌悪の気がある香月。
幼少時の悟能の様子が手に取るように解ります。



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