51.携帯電話
rrrrr ・・・rrrrr ・・・
ピ
「――どうした」
『・・・玄奘様・・・?』
「俺以外に誰がこの携帯を取るってんだ」
『えぇ・・・いえ、声の聞こえ方がいつもと違うものですから・・・。
すみません、失礼なことを・・・』
「謝ることはない。お前の耳がそれだけいいってことだろう」
確かに肉声と機械を通した声とでは、かなり違う。
目が見えない分常人より数段耳の良い計都なら、尚更だろう。
携帯電話に耳を当てながら、三蔵は苦笑する。
お互い多忙を極める地位に在るため、会えない分声だけでも、と2人で選んだ携帯電話だが、思わぬ落とし穴があったようだ。
「俺の声が違って聞こえるんじゃ、本末転倒だな」
『いいえ!・・・あの、大丈夫ですわ。慣れていけば良いのですから』
「良くねぇ」
『え?』
「機械を通した声に慣れたら、逆に会った時に違和感を持つんじゃねぇのか。
それじゃあこっちが困る」
『・・・・・・(///)・・・』
「なるべく早く片付けて時間を作る。だから――直接会って話をするぞ」
『・・・はい・・・』
「なー、これって惚気?」
「さんぞーサマってば、会長室での内容隣に筒抜けなのすっかり忘れちゃってんのねー」
会長室の隣りに設けられたボディーガード待機スペースでは、柿ピーを片手に高画質高音質のモニタを呆れ顔で見る悟空・悟浄。
「この部分はDVDに落としておきましょうか」
同じく隣室の秘書室では、(会長が仕事をサボりそうな時の脅迫に)使えそうな内容を録画・編集する碧の瞳の某腹黒秘書。
三蔵財閥総帥の身の安全はこの3人に守られている――が、プライバシーは例外らしい。
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