今日は朝から雨勝ちの天気で、空は一日中灰色の雲に覆われていた。 その所為で、仕事から帰る頃には本気で冷え込んできやがった。 「うー・・・さぶ・・・」 どちらかというと寒さには強い方なのだが、この急な冷え込みには、流石に頑丈さを誇る俺様の身体にも堪える。 こういう時は、あったかいおでんにキューっと一杯、といきたいね。 そう思いながら前方を振り仰いで、おや、と思った。 街灯も無いこの辺りは、日暮れと同時に真っ暗になり、ぽつんと立つ一軒家――つまり俺様の家――だけが只一つの光源となる・・・普段は。 なのにその家には、灯りが全く点いておらず、やけにうら寂しい雰囲気をかもし出している。 そうだ――昔は、灯りなんて点いてないのが普通だった。 鷭里がトンズラしてからは、真っ暗な部屋に帰り着くのが普通で。 帰って最初にする事が、部屋の電気を点ける――そんな日々にピリオドを打ったのは、つい半年ほど前。 最初は『帰る自分を待つ者がいる』事に慣れなくて、すれ違いもあったけど、今は。 「・・・・・・留守、なのかよ」 灯りが点いている事が自分の中で当たり前になっている事に、気付かされる。 買い物かな?と思いつつ持っている鍵でドアを開け、久し振りに手探りで電気をつけた瞬間、 スパパパパパパンッ 「「「おめでとう/ございます/キュー♪」」」 「は、い・・・・・・?」 「・・・それでさ、八戒が『何も無いように見せかけていきなりお祝いした方が、祝われる方もビックリすると同時に凄く喜んでくれるんですよ』って言ったんだ、だから俺達、電気消して待ってた!」 「へー・・・って、俺が帰って来るまでずっとか?」 「ジープにお願いして見張ってもらってたんです。貴方からこの家が見える少し前の地点に差し掛かったところで知らせを受けて、電気を消して・・・」 「で、3人して気配を消して、クラッカー持って待ち伏せしてたってワケ。へー、ほー、ふーん(ちら)」 「・・・・・・何が言いたい」 ちゃき 「おい、目出度い席で何出してんだよ!」 「テメェの誕生日よかテメェの葬式の方が俺にとっちゃよっぽど目出度ぇんだよ。つー訳で死ね」 「つー訳でってどーゆー訳よ!?」 「まあまあ三蔵、せっかく悟浄も天下御免でお酒が飲める歳になったんですから、銃はしまって、一杯やりませんか?」 「・・・・・・チッ」 「なあ八戒、『てんかごめ』ってケチャップか何かか?」 「・・・なあ、これ、伏せた方がいいんじゃないの?」 「何の話だ」 「悟空、『てんかごめ』じゃなくって『天下御免』、この場合は法律に規制されず堂々とお酒が飲めるって事ですよ♪」 「・・・・・・・・・」 そーいや俺、今日で二十歳か。 さっき『あったかいおでんにキューっと一杯』ってナチュラルに考えた事は、言わねぇ方がいいのかも(汗)。 「そういう訳で、今夜はおでんに熱燗、デザートはブランデーケーキに自家製ラムレーズンのアイスクリームとブランデーを垂らしたコーヒーといったところでどうでしょうか」 ・・・・・・・・・・・・ 「だああああぁっ、俺の秘蔵の醸造酒とブランデー!!」 「ヤですねぇ、今日からお酒が飲めるようになったばかりの人が、お酒を隠し持つなんてある訳ないじゃないですか♪」 「それとも何か、貴様未成年の分際で酒なんぞ囲ってたってのか? 何なら、証拠揃えて今からでも提訴出来るぞ?」 「はっかーい、俺には?」 「悟空にはお酒の入っていないケーキとジュースを用意してますよ」 「テメェら俺を祝う気全くねぇだろ!!」 どっとはらい。 |
あとがき 悟浄二十歳のバースデー。 でも『Be There』の時点から酒もタバコもやってますんで、これまでもこれからも変わらないんでしょうが、やはり法が許すのと許さないのとでは大きく違うということで(といっても日本の法律ですが)。 てか提訴云々言ってる三蔵様だって二十歳前からやってますよね? 取り敢えず読者の皆様は我が国の法に則って二十歳までは我慢して下さいね。 |
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