「ん、何、すっげぇ御馳走じゃん。イイ匂いだな」 「今日はライン風ザウアーブラーテンにツヴィーベルクーヘン、トマトとジャガイモのスープにじゃがいものサラダハンブルク風、デザートはユー○イムのバウムクーヘンですよ」 「・・・・・・すげぇな」 『ジャガイモ』とか『スープ』といった一部の単語を除けば、殆ど意味不明の言葉の羅列だが、八戒が腕をふるって御馳走を作っている事だけは、辛うじて解る。 そして、その理由が、今日という日のためである事も。 「今日は記念すべき日ですからね。それなりの食卓にしないと」 「・・・八戒・・・お前・・・」 「ツヴィーベルクーヘンが焼きあがるまであと少しかかりますけど、殆ど出来上がったので乾杯しますか」 そう言うと、買ってきたばかりらしい赤ワインを取り出し、ワイングラスへ注いだ。 赤い色。だがこれは血の色でも懺悔の色でもねぇ、実りと喜びの色だ。 ワイングラスを顔の近くまで掲げて、八戒は俺に視線を合わせる。 「――では」 「・・・おう」 紅と碧、対照的な色の瞳が向き合い、視線を合わせる。 「それでは――ベルリンの壁崩壊の日を記念して。乾杯♪」 「・・・・・・・・・はい?」 「ヤですねぇ、冗談ですよ♪改めまして、誕生日おめでとうございます、悟浄」 という八戒の言葉が聞けたのは、食事が終わってユーハ○ムのケーキ(バウムクーヘンをデコレートして『Happy Birthday』と書かれていた)を取り出してからだった。 ・・・俺、親友の選択を誤ったかも知んねぇ。 どっとはらい。 |
あとがき 八戒さんは、冗談を言う為の下準備に尋常でないほどの力と熱を注ぎそうです(笑)。 |
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