より身近な内容ほど怖いと思う・・・







 「納涼怪談大会?」

 酷暑猛暑に熱帯夜、近年話題のCO2排出量が気にならないわけもはないが、今はエコより命が大事、とエアコンで涼を取るの下に、八戒から連絡が入った。
 曰く、『怪談で暑さを吹き飛ばそう』という、何ともお約束な内容だ。

『まあ、提案したのは花喃ですけどね』
「あ、やっぱり」

 何かと人をからかったり引っ掻き回したりして、その様子を楽しむのが趣味と言って憚らない八戒の双子の姉は、数ヶ月前まではと大学で同期だった親友だ。

『三蔵先輩もたまたま休暇中だということですし、悟浄も・・・まあ何とかなるでしょう』

 途中の沈黙が気になっただが、触れない方が良いと感じたのでスルーした。
 三蔵は父親が経営しているホテルチェーンで次期会長として修行中であり、悟浄はアルバイトをしていた外食チェーンの正社員に抜擢され、店長目指して奮闘中だ。

『というわけで、明日迎えに行きますので、待っていて下さいね』
「うん判った」






 ――というのが、日がとっぷり暮れたこの時刻にが八戒の家にいる理由だ。
 ちなみにの両親からは、花喃の『私が責任を持ちますから』という言葉と、『門限11時厳守』を八戒共々約束した上で許可が下りている。
 そして八戒の家のリビングには、

「さーて、これで皆揃ったわね♪ロウソクも用意しているし、準備はバッチリよ♪」
「・・・何で俺らこんなとこでこんな事してるワケ?」
「俺に聞くな」
「こんなとこって失礼ですねぇ。いいじゃないですか、少しでも体感温度を低く出来ればこの際方法は何だって」
「・・・個人的には、方法は選びたいかなーと思うんだけど」
「あら、貴女怖い話苦手なの?」
「映像は嫌。絶対ここ!ってタイミングで怖がらせる効果が出るもん。
 話を聞くだけとか本を読む分には、まあ普通かな」
「そう。じゃあやっぱりこのメンバーでは悟浄が一番イイ反応しそうね♪」
「そうなんだ、悟浄?」
「い、いやいやいや、俺は別にその幽霊とかそーゆーモノを信じてるってワケじゃなくてデスネ」
「・・・語尾がおかしくなってますよ悟浄・・・」
「・・・馬鹿が」
「うふふふふ♪お手洗いはもう済ませたかしらー?まだなら早く行った方が良くってよ?」
「おい花喃!」
「・・・八戒、まさかとは思うけど・・・」
「あはははは、まあ小学校低学年の頃の話なので、時効ということにしておいてあげて下さい」
「ということに、じゃねぇっ!マジ時効だ時効!」
「ほぉ・・・図体の割に、肝っ玉は小さいってか」
「るせぇっ」
「まあまあ、涼しくなるための催しでオーバーヒートしたら洒落になりませんから、ちゃっちゃと始めましょうか。花喃、電気消してくれる?」
「じゃあ消すわよ〜」
「わぁ・・・ロウソクの火だけの光景って綺麗ねぇ」
「火傷しないように気を付けて下さいね。じゃあ誰から始めますか?」
「あ、私がやるわ。先にすっごく怖いの話されたら、自分のがつまらなく聞こえそうだし」
「じゃあから時計回りに、花喃、僕、三蔵先輩、トリが悟浄、でいいですか?」

 八戒の言葉に、それぞれが是の返答をする。

「じゃあいくわよ。『恐怖の赤い色鉛筆』の話――

 あるところに、絵を描くのが大好きな女の子がいました。
 使うのは色鉛筆。特に赤い草花を描くのが好きなので赤い色鉛筆をよく使いました。
 よく使うということは、それだけ減りも早くなります。
 あっという間にちびてしまった赤い色鉛筆を手に、女の子は悲しそうなため息をついて言いました。
『もっとたくさん使えたらいいのに』
 ところがその次の日、朝起きた女の子の目に留まったのは、昨夜引き出しにしまった筈が何故か机の上に置かれている色鉛筆のケース。
 少しずれているその蓋を持ち上げると、殆ど新品に近い赤色鉛筆が収まってるではありませんか。
 自分が絵を描くのをよく見ている両親がこっそり買ってくれたのか、そう思ってダイニングへと急ぎました。早くお礼が言いたかったのです。
 ところがどうしたことか、いつも笑顔で迎えてくれる両親の姿が、どこにも見えません。
 まだ寝てるのかと思い、両親の寝室に入った女の子が見たもの。

 それは、全ての血を吸われて息絶えた、彼女の両親の変わり果てた姿だったのです――・・・




 チ〜ン



「ギャアアアアッ!!」
「煩ぇこの赤ゴキブリ!」
「ちょっとぉ、これっくらいで大声出さないでよ悟浄、びっくりするじゃない」
「このタイミングでそんなモン鳴らしたら怖ぇだろうがっ」
「・・・私の話じゃなくて御鈴が怖かったってコト?」
「いえいえ、充分怖かったですよ。っていいますかいつの間に御鈴なんて持ち込んでるんですか花喃」
「まあ細かい事はいいじゃない。じゃあ次私、いくわね♪
 題して『お母さんの行方』――

 あるところに、若い男が、妻と幼い男の子の3人で暮らしていました。
 ですがある日、夫婦喧嘩がエスカレートして、男はカッとなって妻を殺してしまったのです。
 慌てて男は死体を庭に埋め、部屋を片付けて殺害の痕跡を隠してしまいました。
 そして周囲には『喧嘩別れして実家に帰った』と触れ回り、疑われることなく日々が過ぎたのです。
 ですが、男には一つだけ引っ掛かる事がありました。
 幼い我が子が、母親がいなくなったにも拘らず、それまでと変わらずにいるのです。
 男の子といってもまだまだ小さい子供。母親の姿が見えないといって不安がってもおかしくはありません。
 ある日男は思い切って切り出しました。
『あのな、実はずっとお前に言いたかった事があるんだ』
 すると意外な事に、
『あのね、僕もずっとパパに言いたかった事があるんだ』
 と言うではありませんか。
『何だい?言ってごらん?』
 と促すと、男の子は言いました。

『どうしてパパは、ずっとママをおんぶしているの?』――・・・




 チ〜ン



「「怖っ!マジ怖っ!!(←&悟浄)」」
「まあ、定番といえば定番ですねぇ」
「子供の感受性の高さを焦点にした話は、珍しかねぇからな」
「んもう、理屈っぽい人間ってこういう時嫌ぁね」
「じゃあ僕は少し毛色の変わったのを・・・題名は、特にないんですけど。

 漫画・アニメで有名な『名探偵コ〇ン』、あれの作者がそれっぽい事を洩らしたって一部では噂されてる内容ですけどね。
 主人公に毒を飲ませて小さくしたのは黒の組織・・・というのはもちろん誰もが知ってる事ですけど、その本当の黒幕は、実は〇笠博士だという・・・




 チ〜ン



「嘘ぉおおぉっ!?ヤダそれ拙いわよ!」
「マジかよ・・・いや衝撃。俺月曜日に放送してた頃はよく見てたぜ?」
「うわぉ、これ本当なら全国のお子様達が泣くわねー」
「・・・正直話が解らん」
「「「「これだからお坊ちゃまは(怒)」」」」
「仕方ねぇだろ」
「そう仰るのなら、先輩はどんな話をして下さるんですか?」
「・・・八戒、ちょっと怒ってるね?」
「あんな言い方されたら、そりゃあね」
「・・・言われても、ンな都市伝説の類はよく知らん。
 ・・・・・・・・・・・・恐怖を感じる話ってんなら、一つだけ。

 俺達が行ってた高校のある教師のパソコンがウイルスに感染し、個人情報、つまり俺達卒業生の年齢住所連絡先、更には就職先まで詳細に記録したファイルなどがネットに流出したらしい・・・
「「「ちょっと待って/待ったぁ/待って下さいっ!!!」」」
「私は違う高校だから、取り敢えずセーフかしら?」



 チ〜ン



「いやいやいや、それ怪談通り越して犯罪だろ!?」
「事実は小説より奇なりってよく言ったものですねぇ」
「え、ちょっとヤダ、これ学校に確認取った方がいいかも?」
「実際のところどうなんだよセンパイ?」
「・・・・・・俺は知らん」
「ちょっと三蔵〜〜〜っ!」
「じゃあちょっと調べてきますね」



(間)



「お待たせしました。どうやらその話は僕達が入学するちょっと前の事みたいで、流出した情報には達も僕達も含まれていないようですよ」
「あ〜、取り敢えず安心だわ」
「でも情報流出自体は実際あった事なのな」
「ホント、怖いわねぇ・・・じゃあ悟浄、ここでバシッと一ついってちょうだい♪」
「んー・・・・・・俺もありきたりなのしか知らねぇから、まあ身近な話で。

 実は・・・・・・兄貴の奴、水虫だったんだ・・・



 ずざざざざっ(全員後退)



「「いやああぁあぁーっ!!」」
「寄るな触るな伝染すんじゃねぇ、てかいっそ死ね」
「俺は何もねぇって!・・・今のところは」
「一人が水虫になった場合、床やカーペット、バスマットを介して家族に伝染る可能性は極めて高いんです。っていいますか貴方それを知ってて素足で僕の家に来たと?(黒いオーラ)」
「は・・・八戒さん・・・?」
「えーと・・・遅くなるといけないし、そろそろ帰ろう、かな?」
「じゃあ私バス停まで送ってくわ♪」
「当初の目的は果たした。俺は帰る」
「裏切り者共め〜!!」
「あ、忘れてた。話の〆がまだだったわね(くす)」



 チ〜ン♪








―了―

あとがき

8月も終わろうとしているこの時期に納涼話ってどーよ、と言われるかも知れませんが。
でも暑いものは暑いのでこの際暦は完全無視(苦笑)。
始めはそれっぽく、終わりはギャグで。被害者は悟浄唯一人(酷)
ちなみに悟空は受験生だということと、他の設定よりはやや大人達と距離があるため、非参加なのです。
これを書くためにあちらこちらのサイトで都市伝説を調べましたが、赤色鉛筆と妻をおんぶする男の話は実際に香月が幼少時聞いた話です。むしろ〇ナンの話が衝撃的(笑)



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