悟浄の癖に!(嘘ですごめんなさい)





 「あー痛っ。散々な目にあった。ったく、八戒の奴・・・猿も猿でチョコ全部食っちまうし。俺のも含まれてるっつーの」

 外の非常階段でタバコを吹かしながら、悟浄はつぶやいた。
 そういえば、なんだかんだで今日はチョコをまだ一つも食えてない訳だが、別段気にしていない・・・訳ではない。
 終業時間間近。もう、会社で貰うこともないだろう。
 帰り飲みに行くか、と歓楽街のお嬢さん方に思いをはせる。
 そんな悟浄の耳に微かに気になる音が届いた。
 階段を下りていくと非常口の隅っこでゴソゴソ動く影が一つ。

「おい?」
「!!」

 影は目を潤まして、チョコをほおばっている女性だった。
 その足元に散乱しているのは見るからに気合入った高級チョコの包装紙だ。

「あー、大丈夫か」
「あ、あの、ずみません、すみません、ごめんなさい。っずぐ、戻りますから」

 女性は慌てて目をハンカチで押さえると、かがみ足元の包装紙を拾い集める。
 「あっ」っとその拍子に落とし床に着きそうになったそうになったチョコの箱を悟浄は捕まえた。

「あああ、すみまぜん」
「落ち着け。な?」

 悟浄はまだ幾つかのチョコが鎮座している箱を女性に渡そうとした。
 雨でもないのに、女性のかがんだ床に水のシミが出来た。

「もういいんです、そんな物。馬鹿だったんです、私。私なんかから受け取って貰えるわけ・・・」
「なんかじゃねーよ」
「・・・」
「じゃあ、貰うな。美味いな、このチョコ」
「えっ」

 顔を上げると悟浄が二つ目を口に入れるところだった。

「結構高いんじゃねーの?」

 女性はぽかんとして悟浄を見上げる。

「ええと、百貨店の限定ですっごく並んで・・・じゃなくて」

 悟浄は手をとって、女性を立ち上がらせる。

「さて、チョコを貰ったし。お嬢さん、お礼したいんだけど」
「ええ!お礼って、お嬢さんって・・・からかって―――貴方会長の」

 漸くちゃんと悟浄の顔を見たらしく、女性は目を見張った。

「おー、俺ってば超有名♪」
「え、あ、」

 驚きで涙は引っ込んだようだ。

「まずは、名前教えてくるれと嬉しいんだけど。そんで、お礼に食事でもどうよ?」

 会ったばかりの自分を口説く悟浄に女性は目を丸くした。そして―――。

「私の名前は・・・」

 そして、微笑んだのだった。








―了―
あとがき

何と悟浄が幸せになっております(驚愕)!←常日頃不幸にしているのは自分だ
ドリームにしてもいいって館長は言ってましたが、まあ諸事情により(既存の名前は悟浄相手で使いたくないし、別の名前を使う場合は全部のssを手直ししなきゃなんないし)女性の名前はぼかしました。脳内変換で4649です。



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