rrrrr・・・rrrrr・・・
「・・・ったく、日曜の朝っぱらから、一体ナンだよ・・・」
週末ということもあり少々夜更かしが過ぎた身に、日曜の朝から電話の着信音で叩き起こされるというのは辛いものがある。
が、鳴っているのは仕事用の携帯電話なので、無視するわけにはいかない(そんなことをすれば、鬼の会長と悪魔の会長秘書から物理的・精神的に徹底的に痛めつけられる)。
「あ゛ー・・・やっぱ八戒か・・・しゃーねーな」
ピ
「あー、もしもし?」
『お早うございます。っていいますか、もう遅いんですけど』
「いーじゃんよ、日曜だし、今日は休みだろ?ゆっくり寝かせろっての」
どちらかというと土日祝祭日の方が忙しい業種ではあるが、シフト上、本日は正真正銘休みになっている筈だった。
――しかし、
『遅いと言ったでしょう?週末にどれだけ夜更かししたんです?
貴方丸一日寝ていたようですね。今日は月曜日ですよ?』
「・・・へ?」
耳に入って来た台詞が脳内で意味を成すのに、暫く時間が掛かった。
ようやく言われた内容を理解すると、慌てて携帯電話の画面表示を確認する。
4/2(Mon.)10:38a.m.
「!!?っ」
『今日は年度初めなんですから、年度末の業績報告の処理に何処もてんてこ舞いなんですよ。
解ったらさっさと支度して、11時までには出勤することです』
「や、幾らバイク通勤っつったって、普通に30分は掛かるんだって!せめて11時半・・・!」
『言い訳も問答も無用です。それじゃ』
プッ、ツーッ、ツーッ、ツーッ
通話が切れるのと同時に悟浄の脳内でも何かが切れる音がした。
と、取り敢えず着替えて出勤だ。
無理でも何でも、あの八戒の指示を無視すれば、即会長の耳に入り減給処分だ。
朝食は断念、髭剃り歯磨きは会社でするしかない。ネクタイも後だ。
シャツとスーツのみ身に着け、愛車の250ccバイクにまたがる。
既に10時半を過ぎているというのもあり、高速道路は左程の混雑は見せておらず、予想よりはスムーズに本社に到着した。
今何時なのか気になるが、腕時計など着ける暇はなかったし、携帯を取り出す時間もない。
地下駐車場へと入っていくと、守衛詰め所で社員証を提示する。
駐輪スペースにバイクを停め、屋内に入ろうとしたその時、
rrrrr・・・rrrrr・・・
「あーもうっ、解ってるって!」
どうせ11時を過ぎたといって八戒がせっつくために電話しているのだろう、苛々しながらも内ポケットから携帯電話を取り出し、通話状態にする。
「八戒?今駐車場だから!ちょっとは大目に見てくれ!」
『あ、本当に出社したんですね。ご苦労様です』
って、ナンだよその小馬鹿にした口振りは。
『や、本気にするとは思ってなかったんですが、エイプリルフールのお遊びだったもので。
気が付きませんでした?道路も駐車場も、月曜とは全く様子が違うでしょう?』
・・・・・・ハイ?
言われてみれば、周囲に停められている車は数える程しかないが。
「え、だって携帯の表示も4/2って・・・」
『4/1の表示を飛ばして4/2に表示させるアプリを作ってみたんですよ。もちろん、貴方の携帯にだけダウンロードさせて。
大丈夫。本当の4/2になれば正しく表示されますから。それじゃ、良い休日を♪』
プッ、ツーッ、ツーッ、ツーッ
通話の切れた携帯電話が虚しい音を立てる。
「だああぁあぁぁっ!こん畜生おぉおぉぉ――っ!!」
コンクリートの駐車場内に、悟浄の魂の叫びが響き渡るのだった。
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―了―
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あとがき
エイプリルフールの嘘も、八戒さんなら全力投球(笑)。彼の辞書に手加減の文字はありません。
お忘れかも知れませんが、このシリーズの八戒さんは、コンピューター関連の技術に相当秀でています。
カレンダーに沿わない仕事形態だと、たまに日付や曜日の認識が甘くなる香月が、こんなアプリを使われたら、絶対に騙されますね(^_^;)。
今更かも知れませんが、人様に迷惑をかける類の嘘はついてはいけません。 |
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