その先に待つ世界を手にする為に





26.The World

 ※注:これはお題No.3「荒野」の続編設定です。



 「――・・・観世音菩薩、今のは・・・」
「月香――『時空』を司る天人だ」
「はぁ・・・左様で、ございますか・・・・・・あの方が・・・」
「お前は初めて見たか」
「はい。『「変化する」下界と「変化しない」天界を支える存在』――聞き及んだことはございますが、何分にも作り話と認識しておりましたゆえ」
「無理もないさ。あいつの気持ち一つで、天地の理は崩壊しちまう。
 悪用を防ぐには、それを御伽噺と信じさせるのが一番だ」
「そのお方が、如何なされたので?」
「――下界に、降りる」
「・・・・・・それは・・・」
「どんなにあいつが務めを全うしていても、何かの拍子に『綻び』が生じちまう。
 ヒトとして下界に転生し、限られた寿命の中でそれを修繕するのも、あいつの役目だ。
 ただ――いつもと違うのは、今回の『綻び』は、まだ生じていないってことだな」
「と、言いますと・・・」
「――『奴等』が、下界で生を受けた。
 そう遠くない未来に、奴等を巻き込み『何か』が起きる。
 あいつは・・・・・・それを追おうとしている」
「・・・それは・・・」
「あいつは・・・『奴』に想いを寄せてしまった。
 あいつを手に入れるという事は、天地の理を握る事を意味する。
 李塔天の一派が『奴』を狙ったのは、あのチビの為だけじゃねぇ・・・あいつを手に入れるのを阻止する為でもあったんだ・・・」
「・・・何と、そのような・・・!」
「500年前のあの騒動から、あいつはずっと自分を責め続けている。
 今回の『奴等』の転生は、たった一度のチャンスだ。
 近い将来起こる『綻び』をあいつ等が解決すれば、その魂は浄化され、天界に戻る事が出来るのだからな・・・」
「左様でございますか・・・滞りなく遂行出来れば宜しいのですが・・・」
「ハ、滞りなくなんてあり得ねぇな。それこそ行く手には山あり谷あり、障害だらけだろうよ。
 まぁそれでも、あいつ等はそれを蹴散らして進むんだろうな・・・・・・」

 口調は乱暴だが、その眼は、声音は、慈愛に満ちたもの。
 どんなに破天荒な言動でも、その本質は慈悲と慈愛の象徴。
 それをよく理解している二郎神は、只その言葉に聞き入るばかりであった――







あとがき

さり気なく誰かさんの正体についての説明。
詳しいことはいずれ明らかになるので、ここではかろうじて判る範囲での会話のみで。



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