30.通勤電車 「あ・・・」 181pという身の丈のため、顔のすぐ傍に来る電車の車内広告。 ゴシップや過激な見出しが多い週刊誌の広告と明らかに異なる色使いのそれは、様々なジャンルのランキングを扱う雑誌のものだった。 『丸の内OLが明かす隠れ家カフェBest5』等々、読者の購買意欲を掻き立てるような見出しの踊る紙面の隅に、月毎に変わるテーマとは別に毎月普遍的に取り上げられるジャンルの1位が小さく載っている。 『小説部門第1位』『シングルCD部門第1位』といったそれらは、その雑誌を買わなくても最新のトレンド傾向を知ることが出来るため、客商売をする者にとってはうってつけの欄といえる。 八戒の眼を引いたのは、その中にあったたった一つの名前。 『クラシックCD部門第1位 「Celestial blue」 Kate』 「『天空の蒼』・・・ですか」 彼女が決して手に入れることの出来ないその色の名を、そっと呟く。 彼女が奏でる音は、天上の旋律。 自らの持ち得ない『 まさに、至上の調べ―― 「――今日は早めに切り上げてもらいましょうか。あとシャンパンでも届けて・・・」 婚約者の事になると夜も日も明けない、己の雇用主の顔を思い浮かべる。 夕方までに花束を用意して、退勤時に持ち帰らせようと考えた途端、脳裏に浮かぶ彼の顔が嫌そうに歪んだ。 |
あとがき 金曜の朝の出勤風景八戒さんside。 「こーゆー現代にしかない題材出されると・・・(以下略)」とボヤいた瞬間、お題27と対にするという考えが閃きました。 『魂の調べ 天上の旋律』というのが、現代パラレルのタイトルの和訳です。それを2つに分けて、お題27とこちらで使用。 ただいま金曜3:15am。 「寝ないとヤバい」と脳は警告するのですが、そーゆー時に限って小ネタが湧いてくるから哀しい。 そのくせ「さあ書くぞ!」って時には何も浮かばないのがもっと哀しいorz |
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