44.バレンタイン ピンポ――――ン 『はい、何方様?』 「あのォ、私、八戒君と同じクラスの山田といいますけどォ、八戒君に渡したい物があってェ」 『ちょっと待ってね』 ガチャ (うっわ・・・誰これ凄い美人じゃん?妹?お姉さん?取り入った方がイイくね?) 「ごめんなさいね、弟は今デートの真っ最中で、多分今日は帰らないんじゃないかしら」 「そ・・・そぉなんですか・・・?」 (デート?彼女いるの?何ソレ聞いてないっつーの、てか姉に堂々朝帰り宣言!?) 「学校の資料か何かかしら?私が責任持って預からせてもらうけど?」 「い、いえいえいえっ、そういうわけではっ」 (ぎゃーっ!それだけはカンベン!ぜってーこの小姑弟の恋愛にあれこれ口挟んできそう! 『M○ry’s?うちの弟、ロ○ズの生チョコの方が好きなんだけど?』とか!とかとか!) 「あー、もしかしてバレンタインのチョコ?残念ねぇ、あの子、私の親友と家族公認で付き合ってるから。 それと、 山田さんといったかしら。 ご自分の身分は、詐称しない方が良くてよ?」 (バレた――――っ!?) 「!!っ・・・し、失礼しますっ!!」 脱兎の如く走り去る女性の後姿を、呆れたように見やる。 「ったく、男子オンリーの理学部物理学科の何処に女子生徒がいるんだっての」 「花喃ー?誰だったんだい、今の?」 「んー?甘いお菓子にたかる蟻んこみたいなものよ。追い払っておいたから」 「何か、凄い台詞が聞こえたような・・・『今日は帰らない』って誰が?」 「ヤぁねぇ、言葉の綾よ、アヤ」 |
「はっかーい、生クリームが温まったわー。 ボウル支えてて欲しいんだけどー」 |
「解りました、今行きますー」 「八戒」 「何、花喃?」 「もしが『今日は帰りたくない』って言ったら、私はいつでも避難出来るからね?今日は父さんも母さんもいないし♪」 「!!っ――花喃!!」 真っ赤になって声を上げる八戒を尻目に、けらけら笑いながら部屋へと戻る花喃。 今日はバレンタインデー。 現在資格試験に向けてラストスパートの(と、花喃)のため、気晴らしも兼ねて、八戒の家でチョコ菓子作りをすることにしたのだ。 作るのは2人(この点は八戒が断固として譲らなかった。曰く『花喃は調理器具を持ってはいけない』らしい)、食べるのは3人。 まだまだ先の段階へ進む気のない2人の為、時々入るお邪魔虫の駆除に余念のない花喃は、さて次はどうやって2人をたきつけようかと思案するのだった。 |
あとがき 『Sheep and rabbit』設定で、交際を始めて最初のバレンタインデー、な2人。 ヒロインと花喃は資格試験を翌月に控えてちょっと大変。なので当日に2人で作りましょうという展開に――ではあるのですが。 ドリームの様相でありながら主役は花喃だろうとツッコミたくなった貴女は大正解。 姉様がお邪魔虫を追っ払うところが何故か書きたくなったんです。お邪魔虫さんの名前は超適当(見りゃ判る)。 個人的に八戒は○イズのポテトチップスチョコとか好きそう。皆が「エッ!?」って尻込みしそうなのが。 |
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