労働の後の昼寝から目覚めた悟浄は、大あくびをしながらダイニングへと入って来た。 「・・・はよーっす」 「おはようございます・・・といってももう7時前ですけどね」 「え、そうなの?」 「日が長くなってきたもんですから、暗くなるのも遅くなってるんですよ」 八戒の言う通り、冬場ならとっくに日が落ちている時間帯だが、窓の外はまだ完全には暗くなっていないようだ。 どちらかというと時計に頼らない生活をしている悟浄にとっては、昼の長さが変わるというのはどうも調子が狂う。 「道理で熟睡出来たわけだ・・・てか、何か寝過ぎたかも・・・」 睡眠をとり過ぎた時特有の怠さと頭痛がまとわり付く。 目頭を指で摘みながら、上を向いたり首を横に傾けたり、腕を回したりしていると、 「あ、危な――っ!」 「お゛ごっ!?」 前を見ずに歩いていたため、ダイニングテーブルの角に思いっきり太腿を強打した。 打ったというよりは刺さったという表現が近いと思うくらいの痛さだ。 思わずその場にうずくまった瞬間、 ゴンッ 「っ痛――っっ!!」 先程太腿を当てたテーブルの角で、今度は額をしたたかにぶつけた。 一瞬、目の前にチカチカと星が飛んだ気がした。 まともに立ち上がることも出来ず、そのまま尻餅をついた時、 ドゴッ 「☆・Σ・#・Λ・刀EЯ・※・・・・・・!」 伸ばした足がテーブルの脚に当たり、小指をぶつけた。 もはや痛過ぎて言葉にならない声が出る。 反射的に痛む足を抱えようとしたら、 ガガッ 「あっっ!!」 勢い良く身体に近付けた足が、テーブルの脚に引っかかり、反動でテーブルが動いた。 八戒が叫ぶ間もなく、 バシャッ 「熱――――っ!?」 先程八戒が淹れたばかりのコーヒーを入れたマグがテーブルから落ち、悟浄の足に掛かった。 「だ、大丈夫ですか悟浄!?」 「だ・・・大じょ・・・」 大丈夫・・・じゃないかも知んねぇ。 絶対今日は厄日だ、今日は賭場は休もう――そう頭の片隅で考えながら、滂沱の涙を流す悟浄だった。 「――てな事もあったよなぁ」 「そういえばそうですね。――で、何だって今になってそんな事を?」 「そりゃさ、あの頃に今のお前さんのソレがあれば、もーちょっと俺も立ち直りが早かったかも知んねぇじゃん?」 悟浄曰くの『ソレ』とは、八戒の治癒能力だ。 今しがた、三蔵が風呂場と部屋の段差に蹴つまずいて転倒した際にできた怪我を治療する光景を見て、悟浄が3年前の事を思い出したのだ。 「手前がそこで立ち直る必要があったのかよ」 「・・・マジムカつく。ってか段差でつまずくって、既にジジィだろが」 ガウンガウンガウンッ 「一生立ち上がれなくていいみたいだな、つーかここで一生を終えるか?」 「言う前に撃つなー!!」 どっとはらい。 |
あとがき テーブルの角で思いっきり足をぶつけたので、このやるせなさを悟浄へ転化(しかし規模は数倍←酷ぇ)。 悟浄が昼寝(というか夕寝)をするなど、生活パターンについてはこちらを参考に。 八戒の気功による治癒能力って、いつ会得したんでしょうね?(気功砲は旅立ち当日に『見よう見まねで』出来るようになった、というのは原作1巻に載ってますが) それにしても段差でつまずく三蔵様、本気で老化・・・げほげほ(自粛)。 |
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